コラム

ワールドカップ南米通信

Duelo historico(新たな歴史への戦い)06/27UP

ワールドカップ南米通信号外でもお伝えした通り、パラグアイ対日本の対戦が決まりました。同コラムの戸塚哲也氏のお言葉にもありましたが日本が新たな歴史に向かって突き進もうとしていますね。
しかし、ここパラグアイでも全く同じ状況です。パラグアイは今回も含めワールドカップ出場8回中3回はベスト16止まり。そんな彼らはワールドカップを迎えるにあたって「新たな歴史を作るんだ!」という目標を立てていました。日本のように『ベスト4』という具体的な順位までは明言していませんでしたが、この歴史的な背景を頭に入れていただけると興味深い一戦になります。
shigeno06.jpg(写真:デンマーク戦についてスペイン語で「サムライ 襲撃!」という題で報じられていた)

そのパラグアイ、史上初の首位通過とあって 非常に盛り上がっています。
パラグアイのトーナメント行きを決めた2時間後、「まさかパラグアイの放送局がオランダ戦を放送するんじゃないだろうな~」と思いつつチャンネルを合わせてみると・・・日本のイレブンの入場シーンが映し出され、その後筆者自身初の今大会国歌斉唱。やはりライバルの事が気になったのでしょうか?
放送中、特に目立った実況をされたのが、本田・遠藤のFKが決まった瞬間。中でも本田の場合、解説者が「何だこのキックは!」の一言!自分もすかさず日系ベルマーレの選手に「本田圭佑のスパイクは無回転キックをしやすく開発されていて、ロケ・サンタクルスも同じやつを履いてるが彼はどうしたんだ?」とやや上から目線で聞いてみると「そんなの知らね~!」と反撃・・・。日本が目標に一歩近づいてそしてパラグアイも決勝トーナメントに駒を進めうれしいですが、まさか1回戦目で対戦するとは・・・。

パラグアイ国内では、早くも日本戦についての話で盛り上がってますが、その前にパラグアイのグループリーグ最終戦の国内の評価から。ヘラルド・マルティノ監督は試合後の記者会見の中で「結果は満足(1位通過)しているが、試合の進め方は満足していない」と吐き捨てていました。確かグループリーグ3戦目は引き分け以上でトーナメント進出が決定していた訳ですが、ニュージーランド相手にスコアレスドロー。攻撃陣については未だ確固たる形が作れてない所が不満との事です。そしてグループリーグ3戦で、結局FW陣はノーゴールで終了してしまいました。

ここで日本対パラグアイ戦の最新のデータを紹介します。
日本対パラグアイの最後の戦いは遡ること2年前の5月27日の国際Aマッチのキリンカップサッカー2008。結果はスコアレスドローで終わってますが、今回対戦可能な選手を当時と比較すると、
パラグアイはデニス・カニサ、ダリオ・ベロン、ビクトル・カセレス(途中出場)の3選手のみ。
変わって日本は、楢崎、闘莉王、阿部、長友、中村俊、中村憲、遠藤と7人がスタメンで出場、途中出場やベンチ入りも含めると17人もいます。
対戦経験という意味では、日本の方がやや有利かもしれませんが、キリンカップはあくまでも強化試合。ワールドカップ本大会とは全くの別物と考えるのが妥当でしょう。

さてパラグアイ国内の様子ですが、楽観的な見方は全然ありません。やはり日本を相当警戒しています。パラグアイの土曜日の練習に訪れた各国報道陣の数は32人。そのうちなんと30人が日本人だったという報道が流れました。これを警戒したマルティノ監督が、冒頭の15分間で全報道陣を追い出し、その時間に費やした分、練習開始が遅れたといった珍事が発生しています。
日本時間の日曜日にスタメンを決定するそうですが、現地メディアが予想しているスタメンは以下になります。

GK フスト・ビジャル(バリャドリード/スペイン)
DF デニス・カニサ(レオン/メキシコ)
DF アントリン・アルカラス(クラブ・ブリュージュ/ベルギー)
DF パウロ・ダシルバ(サンダーランド/イングランド)
DF クラウディオ・モレル(ボカ・ジュニアーズ/アルゼンチン)
MF エンリケ・ベラ(リガ・デ・キト/エクアドル)
MF クリスティアン・リベロス(クルスアスル/メキシコ)
MF ネストル・オルティゴサ(アルヘンティノス/アルゼンチン)※出場停止のカセレスの代役
FW ロケ・サンタクルス(マンチェスター・C/イングランド)
FW ネルソン・アエドバルデス(ドルトムント/ドイツ)
FW ルーカス・バリオス(ドルトムント/ドイツ)
となっております。

カセレスの代役・オルティゴサが出てくると、日本は少し中盤に余裕が生まれそうです。というのも、彼は南米特有のずんぐりむっくりした体型で、速さへの対応はどちらかというと苦手にしています。日系ベルマーレの選手間では、専ら「彼が出てきたらおしましだ~」なんていう意見もあります。
彼の特徴はアタッキング時のロングキックを多用したパスワークでしょうか。彼もアルゼンチンからの帰化選手で、やはりボール裁きは独特な感じです。DFの中心・ダシルバが足元の技術に長けてるといった方が分かりやすいかもしれません。

既にマルティノ監督は日本の特徴を把握している様子。記者会見でも、本田経由でサイドの大久保・松井の上がり、そして大久保・松井の所でボールをキープしている時の長谷部・遠藤の中央の選手と両サイドの長友・駒野のビルトアップを懸念材料として語っていました。本田にボールを当ててからの速攻を警戒しているので、これを潰された時、日本は厳しい試合を強いられるかもしれません。後はゴール付近でのFKでしょうか。

監督が挙げた日本戦のキーワードは『プレッシング』と『ボール支配率のアップ』。私見ですが、予選3戦を見た限りパラグアイがプレッシング&ボール支持率アップを日本戦で出来るとは思いません。予選の試合ごとにパラグアイのチーム全体の能力が下がってきているのは否めませんし、日系ベルマーレの選手達も同様の発言をしています。

さて他の南米諸国の動きをここで紹介しておきます。

先ずはウルグアイから。
残念ながら韓国は敗れてしまいましたが、オスカル・タバレス監督はベスト8に残った事に関して「なんだか変な感じがする」と語っていました。なにしろ40年振りの進出ですから売れしさ半分、驚き半分といった所でしょうか?
彼自身大会前に面白い事を言ってました。W杯の予選リーグは「コカコーラ杯」(大会スポンサー)で、決勝トーナメントからが本当の「W杯」と。これはFIFAの一部の幹部の間でも冗談としてしばしば囁かれているそうです。今後のウルグアイの「W杯」に期待したいです。

続いてチリです。
気になる所は、ウンベルト・スアソ(サラゴサ/スペイン)の状態。肩・肉離れの状態が一向に回復しない事です。彼は日本で言う『本田的な存在』だけに、彼の回復次第ではブラジル相手にサプライズを起こす事も可能かもしれません。チリの選手達も新たな歴史に向かって、先ずはブラジルを倒す事に集中しています。

続いてアルゼンチン。
奇しくも2006年W杯の再戦となった決勝トーナメント1回戦。マラドーナ監督はメキシコについて、『良い監督の下、日に日に成長し、侮れない相手だが、我々のサッカーをして前評判を覆すべく優勝に向かって突き進むだけ』と記者会見で述べていました。
先発はベロンの代わりにマクシ・ロドリゲス(リバプール/イングランド)、サムエルの代わりにニコラス・オタメンディ(べレス)になうると現地で報道されました。
M・ロドリゲスに関しては4年前のゴールを再び期待しての起用との事ですが、ここら辺の選手起用は選手想いのマラドーナ監督をうかがう事が出来ます。
問題はメッシ。彼はグループリーグの出場参加の中で一番シュートを放った選手ですが、そろそろ1点が生まれてもいいかもしれません。そうなったらアルゼンチンは一気に優勝まで行けそうな気がします。

最後はブラジル。
予選最終戦で不甲斐無い引き分けに終わり、ここに来て国内はやや不満が募っている模様。チリ戦はカカが戻ってくる為、本来の姿を取り戻せるかもしれませんが、ここで集中を切らさないよう細心の注意を払ってチリ戦を迎えたいと監督が選手に鞭を打っている状態です。

南米諸国は良い一体感が生まれています。
アルゼンチンでもウルグアイの活躍を祝い、チリの決勝トーナメント進出を褒め称えています。南米サッカー連盟のニコラス・レオス会長も南米勢の活躍を非常に喜んでいます。
たった1個のボールで普段競い合ってる相手同士が世界の頂点を目指して戦う姿は、見る側からすると、『4年間待ってたったの1ヶ月で終わってしまうのは残念』とは日系ベルマーレの選手たちの言葉。今後も南米勢の活躍から目が離せません。

以上

写真:重野邦四郎

■パラグアイ戦のハイライト動画は下記でチェック!!
イタリア vs パラグアイ
スロバキア vs パラグアイ
パラグアイ vs ニュージーランド

"重野 邦四郎""しげの くにしろう"

1973年4月神奈川県生まれ。
兵庫県滝川第二高校卒。
1993~1997年、南米のウルグアイ、アルゼンチンにサッカー留学の後、2006~2007年はコーチ業を学ぶためにスペイン・マドリッドへ移り、地元クラブでアシスタントコーチを務める。昨年からは再び南米へと戻り、パラグアイリーグで活動する「日系ベルマーレ」(顧問には南米サッカー連盟<CONMEBOL>のニコラス・レオス会長)のフロントスタッフとなる。


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